◇◆山本さん・井手さんインタビュー◆◇

山本さんのコメント

――初演の『ラスト・ファイヴ・イヤーズ』は、山本さんにとってどんな舞台でしたか。
「これは、いわゆる会話を歌にしたミュージカルではなく、全編が歌だけで構成された音楽劇といったもの。一曲一曲がひとつの作品として成立していて、その曲がこれまで経験したどの舞台よりも難しく、苦労した作品でもありました。しかも、ジェイミーとキャシーという二人の恋を描きながら、二人の時間軸が交わるのは、たった1カ所だけ。でも、その一瞬がすごく美しいんです。それを味わうことができたのは、本当に幸せでした」

――ジェイミーは恋の始まりから終わりに、キャサリンは恋の終わりから始まりに向かって描かれるという構成も新鮮です。
「本来なら、ジェイミーとキャシーが二人で築きあげてきた時間を、共演者との芝居のなかで作り上げて行くのだけれど、この作品ではそこに相手がいない。自分の想像のなかで相手の不在部分を埋めていく必要があるんです。それが、つまらない作品だったらきっと成り立たないけれど、これは、いくらでも想像力をかき立てる懐の深さを持っている。そのぶん、小手先では演じられない難しさも内包していて、しっかりとしたバックグラウンドを自分の中でしっかり作り上げて臨まないと薄っぺらなものになってしまいかねないんですけれど」

――山本さんにとって、再演し甲斐のある作品ということですか?
 「そうですね。やりたい作品とやらなければいけない作品があって、これはいまの僕が挑むべきものだと思っています。演じるたびごとに作品が自分の理想を軽々と越えてゆく、貴重な舞台なんですよ」

――最後に、この作品の魅力をお聞かせください。
 「言ってしまえば、よくある男女のラブストーリーで、けっして大きな事件が起こるわけじゃない。でも、誰の人生にも訪れる、人を愛することの喜びや幸せ、悲しみと孤独を描いたドラマチックな物語といえる。人種も何も関係なく、人間として最も純粋で美しい瞬間に誰もが共感できるはずです」

井手さんのコメント

――これが初舞台となりますね。
「自分の歌の世界を広げるためにも、以前から舞台をやってみたかったんです。これまでずっと自分の曲を自分で歌ってきて、どこかで自分だけの小さな世界にとどまらずに、もっと広い世界を見たいと思っていました。新しい世界に触れて、これまで歌ったことのないタイプの曲に挑戦することで、私自身の音楽の世界にもいい風を吹き込んでくれるんじゃないかな。とにかくいまは、多少の緊張感を感じつつ、楽しみで仕方がない」

――役を演じる上で歌うことと、歌手として歌うことでは、違いはあるんでしょうか。
 「同じじゃないかと思います。一曲一曲、ひとつの物語として作っていますし、その世界を伝えたくて歌っている。舞台の中ではそれが一曲完結ではないというだけで、そこに込められた想いは同じ。この作品のストーリーのよさ、込められたメッセージを歌にのせて伝えていきたいですね」

――本番に向けた、いまの気持ちをお聞かせください。
「主演の山本耕史さんは、自分の世界観をしっかりと持っている方。共演させていただくことで、お互いにいい響き合いができればと思っています。そして、この舞台が終わって自分の世界に戻ってきたときに、何か新しいものが生まれていたらうれしいですね」

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