【お知らせ】
シアターガイド2008年4月号にすまけいさん、鷲尾真知子さんのインタビュー記事が掲載されます!
こちらでは掲載しきれなかった内容を詳しく、たっぷりとお届けしています!
      大正時代。その夜の世界を颯爽と駆け、筋の通らぬ盗みはしない義賊たちがいた。「天切り松」こと村田松蔵が語る、「本物の日本人」たちとの時に痛快な、時に浪漫あふるる逸話の数々が、また舞台上に生き生きと甦る! 『天切り松闇語り〜第二夜残侠〜』稽古中の、すまけいさん鷲尾真知子さんから、作品へのアツい思いが届きました!


すまけい
【松蔵 役・ほか】

 そもそもこの小説を勧めてくれたのが、演出の中嶋しゅうちゃんなんです。俺には作品にも作家にも予備知識はなかったけれど、読むほどに胸を打たれ、泣けてね。そんな作品を俺で芝居にしたい、としゅうちゃんが言ってくれたんだからうれしくないわけがない。大きな病気をしたせいで、実現まで何年かかかってしまったけれど、その時間がまた今の、朗読とお芝居を混ぜ、そこに尺八の生演奏が加わる、という舞台の形を生み出すのに、いいように働いたように思えるんです。
 それにしても、この作品の中にはイイ男とイイ女しか出て来ない。これは作者の浅田次郎さんがご自分の本の中で書いておいでなので、俺なんかが言うのは口はばったいけれど、登場人物全員が今はもうなくなってしまった「江戸っ子気質」を、きちんと胸に持っていて、だからその行動や喋る言葉のいちいちが筋が通って小気味良いんだ。
 例えば今回語る「残侠」に出てくる年とった博打打ちは、酔って足腰立たないような状態でも、松蔵たちの頭である目細の安吉の前に出た途端、型通りきっちりと仁義を切る。また「宵待草」でのおこん姐さんは、自分が年来の大ファンだった竹久夢二から言い寄られても、筋が通らず歩む道が違うと思えばはっきりと意見する。皆が皆、不器用だけど精一杯に、やせ我慢してまで道理をわきまえ、私欲に走らぬ生き方を貫く。それが江戸っ子気質ですよ。
 俺は本を読み、この舞台を演じながらこの物語の登場人物たちのファン、贔屓代表になった。だから背筋を伸ばしてきちんと演じ・作らないと、生半かな気持ちで形だけ作るなんてことは出来ませんよ。本気で背筋を伸ばすなんて、俺にはちょっと似合わないけど(笑)、気持ちはしゃんと伸ばしてますからね。
 相方は(鷲尾)真知子ちゃんという力のある女優さんで、これもうれしいんだけれど、舞台上では実は、二人が目を見合わせることはないんです。わざと、客席上の中空で目線が出会うぐらいの顔の向きにするよう、演出が施されているのでね。それでいて様々な想い、恋や友情や尊敬までいろんな心を伝え合う場面があるから、すべてを含んで目で見るのでなく、気取って言えば魂、心や気持ちで見ているつもりで芝居をしているんです。そんな気配も、第二夜の今回はより濃く感じて頂けたらうれしいですよね。



鷲尾真知子
【おこん 役】

 演出の中嶋さんは、原作の小説を読んですぐ、「すまけいさんの声で、この世界を聞いてみたい」と思われたと聞いています。私もそれには大賛成で、この舞台に関わる全員が、浅田次郎さんの『天切り松 闇語り』という小説とすまけいさん、おふたりのファンなのは確かだと思います。
 私にとってはおこんという、滅多に巡りあえないほど素敵な女性を演じる機会を頂けました。彼女の背筋の伸びた潔さ、強い生き方、切る啖呵の格好良さ、どれひとつ取っても私には適いそうもなく、「つまらない人間だな、鷲尾は」と自分で自分に呟いてしまうほど。その点では第一夜も、今お稽古している第二夜も変わらず悩みも苦労も人一倍大きいです。
 だいたいロマンスのお相手が、前回は山縣有朋という今で言う政界のフィクサー、今回は竹久夢二ですよ! しかも、そんな大物たちを惚れさせるばかりか、彼らを目の前にしながら、すじの通らない話には毅然として反論することも辞さない。
 こんな女性を、自分一人だけで作り・演じるなんてとても無理ですから、そこは演出家やすまさんのお力を借りる他ありません。実際自分だけではおこんの想いが消化できず、手も足も出なくなることが何度もあったのです。でも、すまさんの声や心を頂くことで、目の前の中空にいないはずの山縣さんの姿がありありと浮かび、思わず「気持ち良い!」と叫びたいぐらいしっくり来る瞬間が生まれて来た。今回も、そんな至福の瞬間が必ずあると信じています。
 私は基本的におこん役ですが、すまさんは松蔵はもちろん他の男性登場人物だけでなく、語り部として舞台全体を進行する役割まで演じていらっしゃる。今回など、数えたら12役もあるんですよ。そのひとつひとつを、声や調子を変えて演じるわけではないのですが、聞いていると自然に違う人物が浮かび上がって来るのは、すまさんの心が、個々の役を演じるごとにちゃんと動いているからだと思うんです。ちなみに12役は、14歳に成長した少年の松蔵から78歳の博徒までという幅広さ。その役を通して、いろいろなすまけいさんに会えるのは、他では得難いこの舞台ならではの魅力ではないでしょうか。もちろん、私もとても楽しみにしています!

(取材・文/尾上そら)

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